お知らせ
山梨県の『地方病』
この病が、どのように克服されたのか。わかりやすく解説します
謎の奇病「お腹が大きくなる病」
かつて山梨県の甲府盆地では、手足が極端に細くなり、お腹だけが水がたまったように大きく膨れ上がり、やがて命を落としてしまう恐ろしい奇病が蔓延していました。「水腫脹満」「茶碗の欠片」とも呼ばれていました。
農作業などで水田や川に入ると「水かぶれ(皮膚炎)」を起こすことから、人々は水の中に原因があると考えました。お腹が膨れるのは、肝臓が深刻なダメージを受け、お腹に「腹水(ふくすい)」が大量に溜まってしまうためでした。これは末期の症状で、やがて死にいたりました。
「解剖願」を出した杉山なかは、地方病患者の一人です。
杉山なか紀徳碑
新寄生虫の発見と中間宿主「ミヤイリガイ」
長年の懸命な医学研究の結果、この病の正体は「日本住血吸虫(にほんじゅうけつきゅうちゅう)」という寄生虫であることが判明しました。それは桂田富士郎が鎌田村(現 甲府市大里町)の医師 三神三朗の協力により発見さ れたのです。そして、この寄生虫が人間に感染するためには、ある特定の「貝」が絶対に必要であることがわかりました。
それが宮入慶之助博士らによって発見された「ミヤイリガイ(宮入貝)」です。わずか数ミリから1センチほどのこの小さな巻貝の体内で寄生虫は成長し、水中にに泳ぎ出て、水に入った人間の皮膚を突き破って体内に侵入していました。この寄生虫は、人だけではなく、犬や猫、牛などの動物の皮膚からも感染します。
日本住血吸虫の中間宿主「ミヤイリガイ」
人間への感染ルートとライフサイクル
甲府盆地を覆う生息地と、ミヤイリガイ駆除の闘い
ミヤイリガイは、甲府盆地を流れる笛吹川や釜無川水系を中心とした、広大な水田地帯に無数に生息していました。原因が判明した山梨県の人々は「貝が湿って澱んだ流れのせきなどでしか生きられないなら、水路をすべてコンクリートで固めてしまおう」という、気の遠くなるような大工事(水路の三面コンクリート化)を開始します。
甲府盆地に広がっていたミヤイリガイの生息エリア
農薬による貝の駆除、そして安全な水路の整備。さらに、昭和町にある「杉浦醫院」の医師たちをはじめ、多くの医療従事者や地域住民が一体となって、治療と環境改善に生涯を捧げました。
杉浦醫院の外観
地方病診療と研究の場となった杉浦醫院(現・昭和町風土伝承館 杉浦醫院)
コンクリート化された水路
貝を根絶するために整備されたコンクリート水路
ついに「終息」へ、未来への教訓
先人たちの努力、土木工事、そして特効薬の普及により、感染者は激減。1996年(平成8年)、ついに山梨県は「地方病の終息宣言」を出しました。
原因究明から終 息まで100年以上。この歴史は、地域住民、行政、医療が一体となって未知の感染症を打ち破った、世界初の公衆衛生の成功例として語り継がれています。
団体概要・お問い合わせ
地方病教育推進研究会
代表 事務局長 遠藤 美樹(ENDO YOSHIKI)
当研究会は、山梨県における「地方病(日本住血吸虫症)」の制圧の歴史を正しく理解し、その教訓を次世代や地域の子どもたちに語り継ぐことを目的としています。史料の収集・保存、教育現場への情報提供、普及啓発活動を通じて、地域の健康と公衆衛生の価値を再発見する活動を行っています。
お問い合わせ先
入会のご案内、講演・資料提供のご依頼、その他のお問い合わせは下記までお願いいたします。
- 住所:〒406-0035 山梨県笛吹市石和町
- メール:mikien2829@gmail.com
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